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こんにちは、きたむら歯科クリニック院長の北村です。
妊娠中は、新しい命を授かった喜びと一緒に気持ちが不安定になったり、体調のちょっとした変化に敏感になったりするものです。特に妊娠中はお口のトラブルが出やすいのですが、「治療が赤ちゃんに悪い影響があるのでは」と心配で、歯医者に行くことをためらうお母さんも多いようです。
しかし、実際にはそんな心配はありません。むしろ妊娠中だからこそ、母子共に健康であるために積極的に歯医者にかかってほしいものです。
今回は妊婦さんが少しでも安心して受診できるように、マタニティ歯科の基本と、検診や治療についてお話していきます。
マタニティ歯科とは?
妊婦さんが受けられる無料の歯科検診
妊娠中のお口は、普段よりも敏感で変化しやすい状態にあります。そんな時期だからこそ「マタニティ歯科健診(妊婦歯科健康診査)」を受けてみましょう。
マタニティ歯科検診は妊婦さんのお口の健康を守るために、妊娠中に1回受けられる公的な取り組みです。母子手帳の別冊にある受診券をお持ちいただければ、無料で受けていただけます。
当院も彦根市の協力医療機関です。費用の心配なく受けられるので、ぜひ活用していただきたい制度です。
マタニティ歯科健診
(妊婦歯科健康診査)の内容
・歯や歯ぐきの健康チェック
・歯のクリーニング
・歯みがきの仕方のアドバイス
・食事や栄養、赤ちゃんの歯の成長に関するお話
もし虫歯や歯周病が見つかれば、その後は保険診療に移行します。
受診するタイミングは
いつが良い?
健診を受けるタイミングは、体調が安定する、妊娠中期(14〜27週頃)が安心です。つわりが落ち着いてきた4〜5か月頃に健診を受けておくと、より負担が少なく済むでしょう。お腹が大きく妊娠後期はお身体に負担がかかるので、なるべく早めの受診をおすすめします。
妊婦さんの歯科治療は安全?
虫歯治療や麻酔・薬のリスクについて
「妊娠中でも歯の治療は大丈夫なのかな…」と不安に思われる方は多いですが、実際のところ、ほとんどの場合は治療が可能です。痛みを抱えたまま過ごすほうが、お母さんにも赤ちゃんにも良くありません。
当院では、体調や妊娠の週数を考えながら、一番安心できる治療方法を一緒に考えていきます。
治療や薬の赤ちゃんへの影響は?
当院に限らず、一般的に歯科治療は赤ちゃんへの悪影響はほとんどありません。
・麻酔:ごく少量を使用します。無痛分娩でも使われる麻酔薬で、胎児への影響はほとんどないとされているものです。
・レントゲン撮影:使用するX線量はごくわずかで、お腹から離れた部分を撮影します。防護用エプロンも使いますので安心してください。
・薬の服用:妊娠中期以降は、妊婦さんでも使用できる安全なお薬が選ばれます。不安があれば、その場でお声がけください。
受診の際は母子手帳をお持ちいただき、産婦人科の先生からの注意事項があれば遠慮なく歯科医師に伝えてください。
妊婦さんはなぜ虫歯や歯周病に
なりやすいと言われるのか?
「妊娠すると歯が弱くなる」と耳にされたことがあるかもしれません。実際には歯そのものが弱くなるわけではありません。けれども妊娠中は、虫歯や歯周病になりやすい環境が整ってしまいやすいです。
ホルモンの変化で唾液の量が
少なくなる
妊娠すると女性ホルモンが急激に増える影響で唾液の分泌が少なくなる傾向があります。その結果、お口の洗浄効果が弱まり、虫歯予防効果が弱まってしまいやすいです。
つわりで歯みがきが十分にできない
つわりにより歯みがきが苦痛になり、虫歯や歯周病のリスクが高まるケースもよくみられます。特に奥歯のブラッシングが十分に行えなくなるので工夫が必要です。
・体調の良い時間帯を選んで磨く
・ヘッドが小さい歯ブラシを使う
・香料が強い歯磨き剤を避ける
・デンタルリンス/マウスウォッシュを活用する
・食後などにキシリトールガムを噛む
食事や間食の回数が増える
妊娠中期から後期にかけては、胃が圧迫されて一度に食べられる量が少なくなるので、食事の回数や間食が増えてしまいます。
食事の回数が増えると、歯の表面が酸で溶ける機会が増加し、むし歯になりやすくなります。
歯周病菌が活発になる
唾液の分泌量が少なくなることに影響して、歯周病菌が活性化します。加えて、女性ホルモンの変化で歯茎に炎症ができやすくなるので、適切なブラッシングや歯科クリーニングなどが重要になってきます。
歯周病は赤ちゃんにとってリスクが高いので注意
歯周病はお母さんだけでなく、赤ちゃんにとってもリスクがあります。研究では、妊娠中に歯周病があると早産や低体重児出産の確率が高くなると報告されています。喫煙や飲酒よりもリスクが高いとされているので、注意が必要です。
(参考:健口スマイル推進事業 | 妊娠中&出産後の歯について | 妊婦さんと歯周病 | https://www.kenkousmile.jp/pregnantwomen_guide/ | 2025年9月26日)
妊娠で免疫力が下がってしまう
実はお母さんの体は、赤ちゃんを異物として攻撃しないようにわざと免疫力が低下した状態になっています。
この影響で歯周病などの細菌感染症にかかりやすくリスクが高まります。
出産前から赤ちゃんのためにおこなう口内ケア
「マイナス1歳」からの虫歯予防と家族のケア
赤ちゃんの歯の芽は、妊娠7週ごろから作られ始めます。つまり「マイナス1歳」から歯の健康づくりは始まっているとも言えます。
お母さんのお口の健康は、そのまま赤ちゃんの歯の健康につながります。実は、生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯菌はいません。最初の感染はご家族からうつることが多いため、周りの方も一緒にケアを心がけていただくことが大切です。
出産後は育児に追われ、ご自分のケアが後回しになりやすいもの。乳歯が生えてくる生後6か月ごろには、一度小児歯科に相談していただくと安心です。当院では赤ちゃんの診察の際に、ご家族のお口のケア方法も丁寧にお伝えするようにしています。
妊婦さんに優しい歯医者を目指して
きたむら歯科クリニックの取り組み
妊娠中というデリケートな時期だからこそ、安心して通える歯科医院を選んでほしいと思います。きたむら歯科クリニックでも、お母さんが安心して通える医院づくりを実施しています。
麻酔や治療面での体調への配慮
体調をしっかり確認し、痛みや不快感に配慮した治療を徹底しています。
バリアフリーで通いやすい
完全バリアフリーなので、ベビーカーや車椅子のままでもご来院いただけます。
リラックスできる雰囲気づくり
木目調の院内やアロマの香り、治療時の「キーン」という音が少ない器具の使用など、お母さんにストレスをかけない工夫をしています。
徹底した衛生管理で感染予防
うがいや治療に用いる水にオゾン水を利用したり、低濃度オゾン発生機を導入しています。器具は患者様ごとに個別に専用パックで包み、高圧蒸気滅菌器で滅菌しています。口腔外バキュームも設置し、飛沫感染を防いでいます。
マタニティ歯科で安心の妊婦歯科検診と虫歯治療を
妊娠中にお口をきちんとケアすることは、お母さんの健康を守るだけでなく、早産や低体重児出産のリスクを減らすことにつながります。そして、赤ちゃんが健やかに成長するための大切な土台にもなります。
彦根市では妊婦歯科健診の公費助成があり、母子手帳に付いている受診券を使っていただければ無料で受診していただけます。きたむら歯科クリニックは協力医療機関として、妊婦さんに安心して検診や治療を受けていただける環境を整えております。
ぜひお母さんと赤ちゃんのために、マタニティ歯科検診を上手に活用してください。
(※時期によっては予約が取れにくく、お待たせすることがありますが、ご理解、ご協力をお願い申し上げます。)
北村 佳也
きたむら歯科クリニック 院長
当医院では「お口の健康から、関わる人々の生涯を笑顔に」を医院理念として掲げています。
私たちは患者さんのお口の健康を守り、歯に悩まされることなく笑顔で過ごしていただけるよう全力を尽くします。
滋賀県彦根市出身
- 2015年 東京歯科大学卒業
- 2015年 東京歯科大学市川総合病院
- 2018年 オーラルメディシン・口腔外科学講座 研修、入局
- 2018年 草津総合病院歯科・歯科口腔外科 勤務
- 2020年 日本口腔外科学会認定医取得
- 2020年 北村歯科医院 院長就任